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トラブル発生
月曜日は、以前から楽しみにしていた船釣りを予約していました。ところが、その直前の金曜日。新品で購入したDAIWAの「ライトゲームX IC」に違和感を覚えました。
確認すると、エコノマイザーの装着不良と思われる軸ブレがあり、このまま実釣で使うには不安が残る状態です。
購入先はAmazon。
返品や交換の手続きを進めるとしても、週末を挟むため月曜日の釣行には間に合わない可能性があります。
「このままでは、楽しみにしていた船釣りに行けないかもしれない」
そんな不安を抱えながら、近くのヨシダ釣具新宮店へ相談に行きました。
購入した店舗ではないため、正直なところ、
「購入先へ問い合わせてください」
と言われても仕方がないと思っていました。
もし金曜日の時点で断られてしまえば、月曜日の釣行にはもう打つ手がありません。
店員さんは、まずリールの状態を丁寧に確認してくれました。
※ちなみに元々知り合いなどではありません
スプールやエコノマイザーを外し、原因になりそうな箇所を一つひとつ見ながら、店頭でできることをいろいろ試してくれました。
そして、こう言ってくださいました。
「当店に在庫があれば交換します」
購入した店舗ではないにもかかわらず、その場で交換まで検討してくれたことに驚きました。
残念ながら、同じ商品の店頭在庫はありませんでした。
そこで、
「一度お預かりしてもいいですか?」
と提案していただき、その日はリールを預けて帰ることになりました。
その場で簡単に結論を出したり、購入先へ戻すのではなく、まず自分たちで症状を確認し、解決する方法を探してくれた。
この時点で、すでに「きちんと向き合ってくれている」という安心感がありました。
2時間後にかかってきた一本の電話
リールを預けて帰宅してから、約2時間後。
ヨシダ釣具新宮店から電話がありました。
店舗からダイワの営業担当者へ相談した結果、月曜日の釣行に間に合うよう、メーカー側で代替機を用意してくれることになったとのことでした。
しかも、その代替機は、購入した約13,000円のリールと同価格帯のものではありません。
用意されたのは、定価約10万円相当のフラッグシップモデル「ソルティガ」でした。
もちろん、代替機の貸し出しを含め、今回の対応に費用は一切かかりません。
ラインの巻き替えもしてくれます。
驚いたのは、高級なリールを貸してもらえたことだけではありません。
購入店ではない地域の釣具店が、週末を挟んだ月曜日の釣行に間に合わせるために、メーカーと連携し、わずか数時間で代替案を用意してくれたことでした。
守ってくれたのは「リール」ではなく「月曜日の釣行」
今回、改めて感じたことがあります。
私が本当に困っていたのは、リールに不具合があったことだけではありません。
本当に失いたくなかったのは、以前から予約し、楽しみにしていた月曜日の船釣りでした。
私が欲しかったのは、交換されたリールではなく、予定どおり釣りに行ける状態だったのです。
ヨシダ釣具新宮店とダイワは、その背景まで理解してくれたからこそ、単に修理や交換の手続きを案内するのではなく、「代替機を用意する」という方法を選んでくれたのだと思います。
これこそが、CX、つまりカスタマーエクスペリエンスの本質なのではないでしょうか。
「どこで買ったか」より「どうすれば楽しめるか」
通常であれば、購入先であるAmazonを通して返品や交換を行う流れだったと思います。
もちろん、それが間違った対応というわけではありません。
しかし今回、ヨシダ釣具新宮店が最初に考えてくれたのは、責任の所在ではありませんでした。
「どこで購入した商品なのか」よりも、
「どうすれば月曜日の釣りを予定どおり楽しめるのか」
を考え、行動してくれました。
この姿勢が、私の中に強い安心感を生みました。
今後、釣具を購入するときや何か困ったことが起きたとき、自然とこの店舗を思い出すはずです。
「困ったときには、この店に相談すれば何とかしてくれる」
その信頼は、価格の安さや品ぞろえだけでは生まれないものです。
CXへの投資は、LTVへの投資でもある
マーケティングの視点から見ても、今回の対応は非常に合理的だと感じました。
店舗やメーカーにとって、代替機を用意し、担当者が対応することには、当然コストがかかります。
しかし、その対応によって得られたものは、単なる問題解決ではありません。
私は今回の出来事を、おそらく長く覚えています。
周囲の人にも話したくなりますし、こうして会社のブログにも書いています。
そして今後、店舗を選ぶときには、ヨシダ釣具新宮店が有力な選択肢になります。
一度の商品販売で得られる利益だけを見るのではなく、その後も続く顧客との関係をつくる。
今回の対応は、顧客生涯価値、いわゆるLTVへの投資だったとも考えられます。
目の前の数万円のコストではなく、その先にある信頼や継続的な関係を見ている。
その判断が、結果として店舗やブランドの価値を高めているのだと思います。
フラッグシップモデルを「体験させる」という広告
ダイワにとっても、今回の対応は非常に強い製品体験になっています。
もし同価格帯の代替機だったとしても、十分にありがたい対応でした。
しかし今回用意されたのは、約10万円相当のフラッグシップモデル「ソルティガ」です。
高額な商品の価値は、広告のコピーやスペック表だけですべて伝えられるものではありません。
巻き心地や剛性感、操作性など、実際の船上で使用して初めて分かることがあります。
広告を見せるのではなく、実際に使ってもらう。
「買ってください」と売り込むのではなく、最高峰の商品を体験する機会をつくる。
これは、高額商品への興味や憧れを生み出す、非常に強い広告施策でもあります。
少なくとも私は、これまでよりもソルティガという製品を身近に感じるようになりました。
それは広告を何度も見ること以上に、強く記憶に残る体験です。
制作会社の仕事も、納品するだけではない
今回の出来事は、広告やWeb制作に携わる自分自身の仕事についても考えさせられました。
私たち制作会社は、Webサイトや動画、広告物などをつくります。
依頼されたものを、決められた納期と品質で納品する。
それは仕事として当然のことです。
しかし、クライアントが本当に求めているのは、Webサイトや動画そのものではありません。
問い合わせを増やしたい。
売上を伸ばしたい。
採用を成功させたい。
新しい商品を知ってもらいたい。
そして、トラブルが起きてもビジネスを止めたくない。
制作物は、それらの目的を達成するための手段です。
今回の出来事に置き換えるなら、リールが制作物であり、月曜日の釣行がクライアントの本当の目的です。
リールを修理することだけを考えていたら、月曜日には間に合わなかったかもしれません。
しかし「釣行を止めない」という目的から考えれば、代替機を用意するという別の答えが見えてきます。
制作の現場でも同じです。
予定していた広告が配信できない。
撮影日に機材トラブルが起きた。
Webサイトに不具合が発生した。
公開予定のコンテンツが間に合わない。
そのようなときに、
「それは契約の範囲外です」
「指示されたものは納品しました」
で終わるのか。
それとも、
「まずはビジネスを止めない方法を考えましょう」
と、代替案を先回りして提示できるのか。
この違いが、単なる発注先と、本当のパートナーの境界線なのだと思います。
広告担当者として考えたいこと
広告も、伝えたいことを一方的に発信するだけでは、なかなか人の心には残りません。
今回、私は店舗やメーカーから「当社は顧客を大切にしています」という広告を見せられたわけではありません。
実際の行動を通して、その姿勢を体験しました。
ブランドの価値は、広告で語る言葉だけで決まるものではありません。
問い合わせをしたときの対応。
トラブルが起きたときの判断。
商品を購入した後のサポート。
そうした一つひとつの顧客体験が、広告の言葉に説得力を与えます。
どれだけ魅力的なコピーをつくっても、実際の体験が伴わなければ、ブランドへの信頼は長続きしません。
反対に、期待を超える体験があれば、顧客自身がその体験を語り、ブランドの広告塔になってくれます。
実際に、私は今こうしてこの出来事を書いています。
これほど自然で説得力のある広告はないのかもしれません。
私たちも「期待以上の体験」を提供できる存在へ
今回の対応で最も心に残ったのは、高額なリールを貸してもらえたことではありません。
「どこで買った商品か」という責任の範囲を超えて、私が楽しみにしていた月曜日の釣行を守ろうとしてくれたことです。
CXとは、ただ豪華なサービスを提供することでも、何でも無料で対応することでもありません。
お客様が本当に困っていることは何か。
本当に守りたいものは何か。
そこまで想像し、必要な行動や代替案を提示することではないでしょうか。
私たちも制作会社として、言われたものを制作し、納品するだけの存在ではなく、
「困ったときこそ相談したい」
「この会社なら、自分たちのビジネスまで考えてくれる」
と思っていただける存在を目指したい。
今回の釣行前の出来事は、CXの大切さと、プロとしての仕事の在り方を改めて考えるきっかけになりました。
デジタルが進化し続ける時代だからこそ、思いやりや気遣いという人の心により価値を感じた体験でした。

