
みなさんお久しぶりです。
春野デザイン株式会社の佐藤です。
先日弊社代表の亀元と我々の業界と生成AIとの関係性について議論を交わしました。
その中で感じることがあったので、本日はその内容をブログにしたいと思います。
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はじめに
最近、クライアントの皆様や社内外のミーティングで、こんな言葉をいただく機会が本当に増えました。 「生成AIで自社のサイト(ロゴ・バナー)のイメージを作ってみたんだけど、これをベースにできない?」
画像生成AIやUI自動生成ツールの進化は凄まじく、プロンプトを入力するだけで、トレンドを押さえた美しい画面が一瞬で出力されます。これを見て「お、これでもうデザイン完成じゃない?」と感じる方がいるのも、ごく自然なことです。
まずお伝えしたいのは、私たちは生成AIの進化をまったく否定していません。むしろ大いに肯定し、日々の業務でも積極的に活用しています。 アイデアの幅を広げたり、イメージを素早く形にするための相棒として、AIはこれ以上ない強力なツールです。
しかし、同時にこうも思うのです。 「AIが作った『それっぽい見た目』だけで、果たしてその事業は成功するのだろうか?」
ここで一度、デザインの本質に立ち返り、なぜ今こそ人間の「設計力」が必要なのかを考えてみたいと思います。
デザインの5段階モデルで見る「AIの現在地」
UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインの有名なフレームワークに「デザインの5段階モデル」というものがあります。プロダクトを構築するプロセスを、下層(土台)から上層へ、抽象から具体へと積み上げていく考え方です。
- 戦略(Strategy): 誰のどんな課題を解決するか(目的・ニーズ)
- 要件(Scope): どんな機能やコンテンツが必要か(中身)
- 構造(Structure): 画面同士をどう繋ぐか(情報アーキテクチャ)
- 骨格(Skeleton): 画面内のどこに情報を配置するか(ワイヤーフレーム)
- 表層(Surface): 最終的なビジュアル、配色(見た目)
このモデルに当てはめると、今クライアントの皆様がAIで出力し、私たちが目にするものの大部分は、一番上の「5. 表層(見た目)」です。
AIは「綺麗な表層」を秒速で作る天才です。しかし、その手前にある「なぜこれを作るのか」「なぜこの配置なのか?」「本当にこのコンテンツでユーザーの心が動くのか?」という問いには答えてくれません。
そもそも「デザイン」は何のために必要なのか?
ここで重要なのは、「デザインとは、単に見た目を綺麗に整えることではない」ということです。
デザインの本来の目的は、「ビジネスの課題を解決し、ユーザーに価値を届け、事業を成功に導くこと」にあります。
- ユーザーが迷わずに購入手続きを完了できる動線(構造・骨格)
- 自社の強みが一目で競合と差別化されて伝わる文脈(戦略・要件)
これらが機能して初めて、デザインはビジネスの武器になります。 土台となる1〜3の段階(戦略・要件・構造)をすっ飛ばして、AIが作った「表層」の美しさだけで突っ走ってしまうと、「見た目はめちゃくちゃ綺麗だけど、誰も使わないし、1円の売上にも繋がらないサイト」が出来上がってしまうリスクがあります。
AIだけで事業が成功するかと言われれば、現状の答えは「極めて難しい」と言わざるを得ません。なぜなら、AIはまだ「あなたのビジネスの泥臭い文脈や、ターゲット顧客の本当の悩み」を肌感覚で理解しているわけではないからです。
AIは「過去」を学び、人間は「未来」を企む
そもそも、生成AIが真価を発揮するのは「膨大な過去のデータを学習したとき」です。AIは、これまでの成功パターンや、みんなが綺麗だと思うデザインの「平均値」を高速で組み合わせる天才です。
ということは、「今までにない、まったく新しいもの」を生み出すことは、AIの構造上とても苦手だと言えます。AIにどれだけ「斬新なデザインを」と頼んでも、結局は過去のデータベースの延長線上にあるものしか出てきません。
では、まだ世の中にないイノベーションや、新しい価値はどこから生まれるのでしょうか? それは、過去のデータの中ではなく、デザインの土台である「戦略」や「潜在ニーズ」という、まだ言語化されていない人間の領域から生まれます。
AIを否定せず、人間の強みと「共走」させる
だからこそ、これからの時代は私たちの役割が変わっていきます。 AIが表層のクオリティを底上げし、誰でも手軽に「綺麗なもの」を作れるようになったからこそ、私たち人間の価値は「戦略・要件・構造」という上流設計に深くコミットする力にシフトしていくのです。
確かに、すでに言語化できるレベルの悩みや要望(「〇〇業界の一般的な課題は?」など)であれば、これからは生成AIでも十分に整理・対応が可能かもしれません。
しかし、本当に事業を成功に導くために必要なのは、言葉の裏にある「文脈や空気感」を肌で感じ取ること。これは今のところ絶対にAIには代替できない、人間の領域です。
- クライアント自身も無意識に見過ごしていた、事業の本当の強みを発掘する
- ターゲットユーザーのリアルな行動や、感情の揺れ動きから「言葉にできない本音」を読み解く
- ビジネスの目的と技術的な実現性を、泥臭く人間関係を調整しながらすり合わせる熱量
AIが表層のクオリティを底上げしてくれるからこそ、私たち人間はこうした「今までにない価値を創り出す上流設計」により深くコミットできるようになります。
言葉の裏にある「文脈や空気感」を肌で感じ取る必要があるため、今のところAIには代替できない領域です。
見た目のその先へ。私たちが「共走」で目指すもの
生成AIは、デザインの「表層」を誰にでも手の届くものにしてくれました。これはクリエイティブの歴史において素晴らしい進化であり、私たちにとっても強力な武器です。
しかし、AIがどれだけ綺麗な画面を一瞬で作れるようになっても、「そのデザインで、誰の、どんな課題を解決するのか」という問いに命を吹き込めるのは、今も、これからも人間だけです。
私たちが目指すのは、AIを排除することでも、AIに丸投げすることでもありません。
クライアントの皆様がAIを使って「こんなことがしたい!」と持ってきてくださる熱量やアイデアを歓迎し、私たちはその裏にある「まだ言葉になっていない本質的なニーズ」を一緒に掘り起こす。そして、ビジネスとして本当に成果が出る強固な「土台(戦略・構造)」をガッチリと組み立てていく。
見た目の派手さに惑わされず、事業の成功というゴールに向かって、AIを最高のパートナーとして活かしながら、お客様と共に走り続けること。
これからの時代も、私たちは「意味のあるデザイン」「本当に機能する設計」に愚直にこだわり、皆様のビジネスに「共走」していきたいと考えています。
