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トップデザインコラム

2024.12.19 03:28

”アイスブレイク”で2倍の合意形成率!小さな工夫と心地よいコミュニケーションのデザイン

スタッフブログ

 

先日、近所のコンビニで見かけた小さなサンタクロースの飾り。

ほんのささやかな工夫でしたが、そのおかげで『一声かけてみようかな』という気持ちが自然と生まれ、店員さんとの短い会話で朝の気分がぐっと明るくなりました。

実は、こうした小さな「アイスブレイク」は心理学的にも有効で、コミュニケーションを円滑にし、信頼関係を築くうえで重要な役割を果たします。今回は、その効果やデザインの現場での応用について考えてみたいと思います。

小さなきっかけがもたらす大きな効果

レジのスキャナーにサンタクロースの飾り付けがしてあって、何気ないアクセントのようでいて、人の気持ちを和らげる「アイスブレイク」の役割を果たしました。

心理学の研究では、「初対面や緊張を伴う場面で、小さなアイスブレイクが相手への警戒心を和らげ、ポジティブな交流が生まれやすくなる」ことが示唆されています。

例えば、交渉研究で知られるJanice Nadler氏による2003年の研究では、事前に短い個人的なやり取り(アイスブレイク)を挟んだ交渉グループは、アイスブレイクのないグループと比較して、およそ2倍近くの高い合意形成率を示したと報告されています。

これは、アイスブレイクが単なる「和ませ」以上に、双方にとって有益な関係を築く土壌をつくる力があることを示す好例です。

心理学が裏付けるアイスブレイクのパワー

アイスブレイクが人の心にプラスの影響を与えることは、他の研究でも明らかになっています。

米国シカゴ大学のNicholas Epley氏やJuliana Schroeder氏の研究(2014年)では、見ず知らずの人と公共交通機関で会話すると、想像以上に心地よい体験となり、幸福度が高まることが示されました。また、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のElizabeth Dunn氏による研究(2014年)でも、カフェでバリスタとのわずかなやりとりがコミュニティへの帰属感やポジティブな気分を高めることが確認されています。

これらの研究から、たとえ短い言葉のやり取りであっても、人は「心地よさ」や「つながり」を感じやすいことがわかります。

デザイナー視点で考える「アイスブレイク」の活用

私たちは「デザイン」を通じて、人と人とをつなぐ仕事をしています。デザイナーとして心がけたいのは、「ユーザーが最初に接するポイント」に、ほんの少しの遊び心やホスピタリティをデザインすることです。

UIへの季節感の取り入れ

ウェブサイトやアプリの初期画面に、季節を感じるイラストやカラーを用いることで、ユーザーは「ここは歓迎してくれている」という気持ちを抱きやすくなります。

コミュニケーションの導入サポート

クライアントやチームとの打ち合わせでは、最初の挨拶や一言メッセージにちょっとしたネタを入れることで、議論がスムーズに進み、よりクリエイティブなアイデアが生まれやすくなります。

資料・提案書へのワンクッション

堅苦しい提案資料にも、可愛いアイコンやちょっとした手書きイラストを添えると、相手が資料に向き合うときの心理的ハードルを下げ、理解促進につながります。

デザインで創る「対話しやすい」環境づくり

デザインは、見た目の美しさだけでなく、人と人との「対話のしやすさ」を生み出すこともできます。

アイスブレイクとなる要素を配置することで、互いの心を開き、信頼関係を築く助けになるのです。これは、ビジネスシーンでも日常生活でも共通する人間らしいコミュニケーションの本質といえるでしょう。

ちいさな一歩が築く豊かなつながり

レジ横にいたサンタさんが教えてくれたのは、「ちょっとした工夫で、心がふわっと和らぎ、自然と声をかけたくなる」力があるということです。その一言が、幸福感を高めたり、合意形成を容易にしたり、クリエイティブな発想を引き出したりするわけです。

私たちがデザインというツールで実現したいのも、こうした「人を近づける仕掛け」づくり。小さな一歩が、人々を笑顔と信頼で満たす大きな一歩につながると信じ、これからも心地よいコミュニケーションのデザインを追求していきます。

亀元友弥
亀元友弥代表デザイナー(CEO)
福岡市中央区のデザイン会社、春野デザイン株式会社の代表デザイナー。20歳でLINE Fukuoka株式会社 入社。LINE Qアプリ運営デザイン部に所属しデザインスキルを身に付ける。その後、DTPデザイン、WEBデザイン、アプリ開発などのスキルを身に着け、広告運用の実務を2年経験し会社を起業。